
牛たんといえば、焼肉屋で最初に焼くものとか、こってりと煮込まれたタンシチューってうまいよね、というくらいのイメージだった。しかし、オープンしたばかりだった『牛たん良助』で、はじめて『宝定食』なるスーパースペシャルな牛たんを食べたときは、それまでのイメージがガラガラと崩壊。牛たんを軽く見ていたことを心から反省したほどだ。 ちなみに『宝』とは、牛たんの付け根の《たん元》のさらに根元の部分。牛一頭からせいぜいひと切れしか取れない希少部位だ。

「店をはじめたころは、宝の部分はよけて使っていなかったんです。まかないで食べていたら、脂分が多くてステーキっぽい肉質だけど、牛たんらしい食感もある。これだけ集めて定食にしたら喜ばれるかも、と閃いたんですよね」と店主の田中良介さん。
ひとり分の宝定食に牛5〜6頭分の宝が必要なので、値段も高め。ふつうの牛たん定食が1,755円なので、ほぼ倍の値段だ。それでも一度でも食べたことのある人は、お宝めがけて店にやって来る。

「この特別なおいしさを味わってもらいたいので、できるだけ厚切りにして焼いています。やわらかな食感と、ほど良く脂がのったジューシーさは、ほかの肉にない味ですよ」。
そしてこの店の牛たんをさらにおいしくしている秘密が、特別あつらえの『塩麴』。丁寧に下処理した牛たんに、この塩麴をたっぷりとまぶし、一晩寝かせる。塩麴効果で肉質がやわらかくなり、ほどよい塩味がゆっくりじわりと浸透する。

「店をはじめる前、うちならではのやり方で調理したくて、いろいろ考えていたとき、妻に『塩麴を使ったら』とアドバイスされ、やってみたんです。でも市販の塩麴では、おいしくならなかったので、麹屋さんに相談し、塩分濃度を変えた塩麴を調整してもらいました。今使っているのは、熟成させた無添加の塩麴。牛たんの味をうまく引き出す、欠かせない調味料です」。

研究熱心な田中さんだけど、店を開く前はサラリーマン。料理修業の経験はゼロと聞いてびっくり。
「漠然とした自信があったというか、できる気がしていたんです(笑)。会社員時代、仙台の出張が多く、行く度に昼も夜も牛たん定食を食べ歩いていて、牛たんの魅力に惚れたことと、この辺りに専門店がなかったので、自分で店をやってみたいと思うようになったんですよね」。

牛たん焼きに麦飯、とろろ、青唐辛子味噌漬けにテールスープという仙台スタイルを守りつつ、独自の調理法で提供する牛たんは、開店以来、続々とファンが増えた。
《宝》だけでなく、《さがり》という歯ごたえのある部位を、ネギと炒めた一品もビールにぴったりの人気メニューだ。

炭火の前で田中さんはトングと箸を持ち、休むことなく牛たんを両手焼き。その動きが、なんともリズミカル。実はいまもストリート系ダンサーとして活動しているそうで、そのバイブスもおいしさのうち、かも。
「牛たんの店が増えてきましたが、うちは居酒屋ではなく、あくまでも定食屋です。『きょうのごはんは、牛たんにしよう』と来てくださるのが、いちばんうれしいんですよね」。

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藤沢市遠藤934-19 11:30 ~ 13:50(L.O.)/17:30 ~ 20:50(L.O.)※しばらく夜営業は土日のみ。
※牛たん売り切れ次第閉店 月・火曜定休、不定休あり P5台
宝定食3,296 円 ※数が少ないので予約をおすすめ。とろろ273 円、さがりネギ946円、生ビール541円
*営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。