
ジェラートをなめながら、ジェラートをなめていたのかもしれない。アイスクリームよりも乳脂肪分が少なくて、シャーベットほど素材そのまんまじゃなくて、イタリアンだから何かちょっとおしゃれで、くらいのイメージしか持っていなかった。
おいしいジェラートは大好きなので、50を越えたおっさんにしてはよく食べている方だと思うけど、ジェラートが《そこまで》のものだとは、あまり考えたことがなかった。

いやいや《そこまで》のものですよ、これはイタリアの大切な食文化なんですから、と教えてくれたのは、アリエッタの肥田野雄紀さん。かつてミラノ近郊の『GelateriePallini』で修業しながら、イタリアにおけるジェラートを肌で感じてきた。

「バルでエスプレッソを飲み、レストランで食事をし、ジェラテリアでジェラートを食べる。彼らにとってどれも日々の生活の一部なんですよね」。向こうでは主に、昼食〜夕食の間、夕食〜寝るまで(!)の間がジェラートタイム。夏場の人気店では3時間並ぶのも当たり前とか。 アリエッタに掲げられた黒板には常に26種前後のメニューが並んでいる。なるべく近隣地域で穫れた旬の果物、イタリア直輸入のナッツ類などを使うのが、肥田野さんのこだわり。

『カッサータシチリアーナリコッタリーズのジェラートにイタリア産ドレンフルーツとオーガニックカカオのチョコチップ砕いたピスタチオを散らして』なんて呪文のような説明書きほどおいしそうに思えるのは、ぼくだけだろうか。
「わからないメニューがあったら、気軽に聞いてください。ショーケースのジェラートに蓋をしているのは、光や空気接触による劣化から守るため。それくらい繊細なものなんです」。



とある常連さんは「アリエッタさんのジェラートには語りかけてくるものがある、風景が見えるんです」と語っていた。アリエッタを訪れると3種盛り《グランデ》を20カップほど食べていくそうだ。
そういえば、肥田野さんも風景というワードを使っていた。「マイナス10度のジェラートが36度の口の中で溶けるとき、どう香りが開いて、どんな風景が見えるのか、想像しながらつくっています」。
つくり手の思い描く風景と、食べ手が感じ取る風景は、まったく同じものではないのかもしれないが、そんなふうに風景を共有できるなんて素敵すぎるぞ、ジェラート。

『GelateriePallini』の師匠は、肥田野さんがつくった桃のジェラートを口にして「アリエッタ(そよ風)のようだ!」と言ってくれたそうだ。その言葉がうれしかった肥田野さんは、自分の店をアリエッタと名付けた。ジェラートを食べたひとたちが気持ち良いそよ風を感じてくれますように、という願いを込めて。


#伊勢原・海老名・秦野 #秦野 #ジェラート #イタリア #イタリアンジェラートをなめるな
秦野市西大竹3-8
11:00~18:00 不定休 P9台
ジェラートピッコロ(1種盛り)371円/プレミアム510円、メディオ(2種盛り)426円/プレミアム602円、グランデ(3種盛り)482円/プレミアム695円、コーン28円