アスランのパンが食べたくなったら開成町まで車を走らせるのだが、それが夕方だったりすると、見事なまでにきれいさっぱり何も残っていないことがある。開成町役場前にあるこの小さなお店は、よほど地元のお客さんに愛されているのだろう。 店主の佐藤陽平さんは《自分の親戚に接するようなサービス》を心掛けているという。雨の日には「こんにちは!こんな雨の中ありがとうございます!」なんてふうに迎えてくれるから、「いえいえパンをちょっと買いに来ただけなんです、ごめんなさい」と、何だか恐縮して謝りたくなってしまったり(笑)。

そういえば以前、小田原の友人がアスランでカレーパンを買って外へ出たら、すぐに佐藤さんが追いかけてきて、「今ちょうどカレーパンが揚がったので、こちらの方をお持ちください!」と言って、熱々のカレーパンと交換してくれたそうだ。アスランには、きっとそんな《ちょっといい話》がたくさんあって、それもまた毎日パンがよく売れている理由のひとつなのだろう。

松戸の名店『Zopf(ツオップ)』に年いた佐藤さんが、独立して6年。昨年からハマっているのが、ドイツパンのブレッツェルだ。『ベッカライコンディトライヒダカ』の日高晃作さんがつくるブレッツェルに感動し、お店のある島根県大田市まで行って教えてもらったという。
「南足柄の畑で自分たちが育てた金太郎小麦と国産小麦を使って、日高さんのレシピどおりにつくっています。真ん中の厚みがあるところは表面のパリパリ感と中のもちもち感が両方楽しめて、細いヒモみたいになっているところはカリカリに焼けていて香ばしいのが、理想的なブレッツェルですね」。





アスランのブレッツェル好きとしては、その細いヒモの先が本体(?)にペタッとくっついた2つある凸部分のカリカリレベルも素晴らしい。あと、風味をグッと引き立てているドイツの岩塩は、「お好みではらってお召し上がりください」と説明書きにあるが、はらわなくて無問題、ちょっとしょっぱめくらいがおいしいように思える。


ブレッツェルにはプレーン、チーズ、パンチェッタの3種類があり、ぼくのおすすめごちそうパンはパンチェッタ。ゴーダチーズとモッツァレラチーズ、アーモンドスライス、そして鴨宮『ビストロ・ルパ』の藤井真大シェフにつくってもらったというパンチェッタが、贅沢にたっぷり載っている。 それこそドイツ人のようにでっかいジョッキ入りの生ビールをぐびぐび飲みながら、かぶりつきたいパンである。

Bakery ASRUN ベーカリーアスラン 開成町延沢854 営業時間 金〜火曜7:30〜18:00 水・木曜定休 P3台
ブレッツェル150円、パンチェッタ280円、チーズ210円、秦野産落花生とごぼう300円、コロッケハウス180円、照り焼きチキン190円