【かえるの声が響き渡るのどかな田園地帯の暗闇にあやしく発光する角打ち酒場】
店のサイトに「中井町の田んぼの目の前にひっそり佇む」と書かれているとおり、宮川酒店はもともとどちらかといえば地味目な酒屋だったが、2017年、宮川満洋さんと綾さん夫婦は建築デザイナーのチョウハシトオルさんに依頼して、この店舗をかっこよく生まれ変わらせた。

レジまわりにカウンター、酒の入った冷蔵庫前には、大きなテーブル席……まさかの角打ち(酒屋にある酒を購入してその場で飲むこと)スタイルだ。うみちかエリアでもすっかり少なくなってしまった角打ちが、中井町の田んぼの前に現れるとは……うれしすぎる。
ここで角打ちが楽しめるのは、『新月・宮酒場』が開催される新月の夜。生ビール、日本酒、ワインがカウンターに並び、そのほかの店内にある酒はすべて定価でどうぞシステム(ちなみにボトルのワインや日本酒を購入してその場で飲む場合は最初だけグラス代として1,000円が加算される)。満洋さんにワインの好みをざっくり伝えるだけで、すぐに何本か持ってきてくれるところは、さすがシニアソムリエ!

『新月・宮酒場』は毎回、このあたりで人気のキッチンカーや料理人、満洋さんのお母さんなどが、酒にぴったりのつまみを作る。店内には珍しい乾きものや缶詰も置かれているし、四方八方を酒のボトルに囲まれているし、何だかいくらでも飲んでいられそうな気がしてくる。ビバビバ角打ち!なのである。
宮川夫妻は茅ヶ崎・リベンデルでもう9年くらい『満月・宮酒ワインバー』をやっているが、満月だけじゃなくて新月の夜も飲みたくなるよねー、ということではじまったらしい。まあ、飲んべえというものは結局、満月でも新月でも三日月でも、飲めればいいのだ。どうせ夜空よりグラスばっかり見ているのだから。

『新月・宮酒場』へ繰り出すときはいつも、二宮駅北口からバスに乗る。ふだんから街灯が少なくて暗い旧道が、新月の夜は、さらに暗い。バスに揺られること10分、ヘッドライトが届かない闇の先に、何やらあやしく発光する宮川酒店が見えてくる。そんなふうにはじまる夜、ここにしかない夜。そしてぼくは、1杯目はベアードのIPAだな、なんて思いながら降車ブザーを押す。
*2020年8月から毎週金曜の夜、新たにフライデーナイトフィーバーな『金曜・宮酒場』、通称『きんみや』がスタート。涼しくなったらw、潜入してきます。 海の近く編集部 塩谷卓也

宮川酒店 中井町井ノ口693−10
10:00〜19:00 水曜定休、日曜不定休 ※『新月・宮酒場』は新月の夜(17:00〜22:00)開催。 『金曜・宮酒場』は金曜夜(17:00〜22:00)開催(電話入れてからお出かけください)。