肉類を一切使わない中国料理というと、誰もが「?」な顔になる。かといって精進料理でもヴィーガン向けでもない。噂の店は2018年に開店した『fu-fu shisen(フーフーシセン)』。

「肉料理を出さない店はどう?というアイディアを妻から出され、少々驚きながらも、同時におもしろいと思いました。それまで働いていた店でもお客様のあれが食べたい、これ作って、というリクエストに応えて、料理人としての成長に繋がったし、難しいことほど燃える性格なので、やってみよう、と決めました」。 さらには、卵と乳製品もまったく使用していないそうだ。

使う食材は魚介と野菜のみ。しかし四川料理独特の辛さや味わいは減るどころか、この店にしかない個性もプラスして楽しませてくれる。そんなチャレンジャーの店主・廣木臣尚さんは、横浜の『トゥーランドット 游仙境』から料理の世界に入り、その後は都内の『芝蘭』など、主に四川料理の名店で腕を磨いた。

黒板メニューを見ると、山椒とかピリ辛発酵ソースとかスパイシーとか、字面だけで発汗しそうな料理名が目立つ。
「ぼくが四川省に勉強に行ったときよく食べたのが『酸辣湯麺』で、四川では『酸辣粉(フェン)』というサツマイモ粉から作る春雨が主流なんです。それを食べて四川料理に対する概念が変わりました」。

酸辣湯といえば、具がいろいろ入ってとろみをつけた酸っぱいスープが浮かぶが、『fu-fu shisen』の酸辣湯麺はまったく別もの。具らしき具がなく、潔いほどすっきり。つるつるとのど越しがいい自家製ストレート麺をすすると、クリアな辛さに体の五感がより敏感に反応をはじめる。時間差で黒酢の酸味がジワジワと追ってくる。

辛さに酸味が追いついて、スパイシー&サワーの競演を味わいながらスープを飲み干すころには、胃袋周辺がほくほくと温かい。この複雑で奥深い味は、自家製調味料と、スープベースの昆布だしの成せるワザ。
麺も試行錯誤を重ね、完成したのが無かんすいの小麦粉麺。イタリア産の中力粉に出合い、理想に近い麺ができたという。

「中国から取り寄せる唐辛子や香辛料、フレッシュな香味野菜を使い、調味料や香味オイルは全部自分で作っています。酸辣湯麺の味の決め手は『辣椒醤(ラージャオジャン)』。四川で最も使われる朝天唐辛子を挽き、3種類の豆板醤と、オリーブオイルに香味野菜や10数種類の香辛料を加熱して作る香りオイルをミックスし、数日寝かせてから使います。うちの多くの料理に使ういちばん大事な調味料です」。

鍋の中のどろりとしたたれが、それだ。『辣椒醤』はシェフお得意の魚料理にも使われる。
「《家常》と呼ばれる家庭料理の魚の煮つけですね。和風なら醤油で茶色くしますが、四川では赤く仕上げます。わかりやすくメニュー名は豆板醤煮込みとしていますが、実はさまざまな調味料を使っているんです」。

豆腐を揚げて作る厚揚げと旬の蕪とその日入荷した魚を、丁寧に煮込んでできあがる四川の魚料理。仕入れの時に最も良い状態の魚を選ぶので、鰈のほかイシモチ、メバル、ソイなども使う。肉料理がないなんて、と思っていた訝しさがどこかにすっとぶうまさだった。


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fu-fu shisen
藤沢市鵠沼橘1-1-15 富洋ビル1F 17:00 ~ 21:00(L.O.)月曜定休
酸辣湯麺900円、鰈と厚揚げの豆板醤煮込み1,450 円、各種小皿料理500円~
*営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。
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