2011年の夏に開店したPaglietta(パリエッタ)は、地元を中心に、日本各地の生産者から届く食材をうまく使うイタリアンレストランとして人気がある。しかし以前は「ここまで地元で食材が揃うとは、まったく想像していなかった」と石井直樹シェフは言う。
「都内で働いていたころは、この食材を誰が作って、どんなふうに運ばれてきたか、知ることもなかったんですね。野菜も昔は鎌倉のレンバイで仕入れていましたが、お客さんから『茅ヶ崎海辺の朝市』のことを聞いて毎週買いに行きはじめ、直接生産者さんの畑まで仕入れに行くようになりました」。

今朝、釣り船経由で水揚げされたという甘鯛は、固い鱗をカリカリに焼いて、花が咲いたように仕上げるクリスピーなウロコ焼きになった。添えられたのは茅ヶ崎産のイタリア野菜、カーボロネロ(黒キャベツ)だ。
「都内では高くて使えなかった甘鯛のような魚が近所で買え、いろいろな形で調理できるのは楽しいです。甘鯛はウロコ焼きでも、蒸してもアクアパッツァでもおいしいですよ」。

伊右衛門農園の野菜と組み合わせて、軽く炙ったアオリイカは、シェフが惚れ込んでいる三重県の尾鷲漁港から。雨の多い山から海へと流れ出た豊富な栄養分と、熊野灘の黒潮にもまれて育った魚や海老は、相模湾の魚とはまた違った味わいだとか。そのイカをねっとりと甘くする方法は、地元の寿司屋さん仕込み。イ力に入れた繊細な切込みもまた和食屋さんから伝授されたワザ。ふりかけたのはパウダー状にしたカラスミ、ボッタルガ。ボラの卵を数週間天日干しして出来上がる自家製カラスミも、石井シェフの手作りだ。

「新鮮なもの、季節のもの、安心安全なものを食べてもらいたい、それがいちばんですね。それをどうすればもっとおいしくできるか、そんなことばかり考えています」。
そしてメニューにはないけど、ぜひ食べて欲しいパスタがある。しばしば世間で話題に上る「本場では生クリームは入れない、卵だけで調理する」というカルボナーラ発祥の地、ローマスタイルのパスタ『カルボナーラ・ロマーノ』だ。

ソースのベースになるのは豚の頬肉にブランデーやスパイス、ハーブをすり込んでじっくり熟成させた塩漬け肉《グアンチャーレ》。グアンチャーレをじっくり炒めて脂を溶かし、白ワインと卵黄と羊乳のチーズ、ペコリーノロマーノをたっぷり加える。パルミジャーノチーズの量は少なめ。ペコリーノの塩気で味を決め、パルミジャーノでうま味を足す、そんな配分。卵を加えてこっくりと仕上がる濃厚なソースにクリームは不要だ。

「裏メニューというほどでもなく、材料は常にあるので、いつでも作れます。あのカルボナーラ食べたい!というリクエストを、けっこういただくんですよ。ぜひ試して欲しいのが、カルボナーラのトリュフがけです。卵とトリュフの相性が抜群なので、お好みの量を削ってトッピングしています。冬トリュフが出回るシーズンには、カルボナーラと一緒に味わっていただきたいですね」。
トリュフがけのカルボナーラは、うっとりするほど魅惑的なおいしさだった。

#茅ヶ崎 #Paglietta #イタリアン #Italian #restaurant #尾鷲
----------------------------------------------------------------------
Paglietta
茅ヶ崎市共恵1-5-24 郷野ビル102
12:00 ~14:00( L.O.)/18:00 ~21:00(L.O.)月曜定休のほか月2回不定休あり
アオリイカとカラスミの一皿1,400 円、甘鯛のウロコ焼き2,400 円、カルボナーラ・ロマーノ1,300 円、トリュフ時価(量はお好みで調整)
*営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。