
顔と紙の距離が近い。目と絵の間で、右手に握ったホルベインの油性色鉛筆が器用にうごめく。ギュッギュッという音が聞こえてきそうな強い筆圧。荒っぽく塗りたくるのではない。画面いっぱいに描いた花や動物の下絵からハミ出すことなく、正確に着実に、水野カラーとでも呼びたくなる濃厚な色が塗り重ねられていく。
「下絵は写真などを参考にしながら、1日で描きます。色を塗るときはもう写真を見ない。コーヒーの仕事もあるし、出来上がるまでに何日もかかるな」。
コーヒーの仕事。それは、ギャラリークーカにあるカフェでコーヒーを煎れるマスター業のこと。注文があると、ハンドミルでガリガリと5分くらい(いや決してオーバーではなくホントにそれくらい!)かけて豆を挽いてから、ポタポタと少しずつ湯を落とすようにハンドドリップ。
心をこめてコーヒーを煎れる様子は、水野カラーを丁寧に塗り重ねていく姿にも似て。
作家:水野貴男 1982年生まれ、2009年からスタジオクーカに所属。曲がったことが大嫌いで、正義感が強い。 作品タイトル:どうくつの中をすべりながら歩いているペンギン
サイズ:210×297mm
studio COOCA スタジオクーカ 精神障害、知的障害、身体障害など様々なハンディキャップを持ったメンバー90名が、絵画や創作などそれぞれの好きなこと、やりたいことで収入を得るために活動する福祉施設。 www.studiocooca.com GALLERY COOCA ギャラリークーカ メンバーの作品やグッズ満載のギャラリーカフェ! 平塚市明石町14-8(平塚駅北口から徒歩6分) 0463-67-7520 月〜金10:30〜15:30