小田原市内から、大井松田インター方面に向かう国道255号沿いにある『丼万次郎』。看板には『いつかは世界の丼万次郎』と書かれている。 いささか失礼ながら、そのネーミングといい、店構えといい、一見しただけでは、ありふれたロードサイドの和食レストランといった印象だ。しかし実は、バリエーション豊かな丼メニューだけでなく、煮魚や天ぷら、フライなども食べられる店で、とりわけ小田原漁港で毎朝買い付ける地魚の料理はどれもおいしく、しかも驚くほど安い。いつかは世界の丼万次郎、ありえるかもしれない。

厨房に立つオーナーの鍵和田真也さんは、30年近く小田原界隈で寿司店を営んできた方で、地元・相模湾の魚に関してはかなりの目利き。 「まぁ、魚といえば大トロだなんだって言うけど、相模湾の魚はね、小ぶりの魚がすごくうまいんですよ。イサキやカマス、アジ、クロムツ、イナダとかね。そういうおいしい地魚を、できるだけ安く提供する店をやりたくて、ここをはじめたんです」。


数ある丼の中でも、いちばん人気のある小田原地魚漬丼には、今朝水揚げされた地魚8種類がのっている。
「アジなんかもう獲れたてだから、身がプリプリしていて、売るのがもったいないほどだよ、あははは」と言うほど新鮮。それらの魚を朝から丁寧に仕込みする。夏のカマスは味が薄いそうで、軽く炙って香ばしさを出してから使うという。そういう細やかな心配りもおいしさのうち、なのだろう。

そして注文が入ってからほんの3分ほど漬け汁に浸し、地魚漬丼が完成。漬け汁も品質のいい醤油と本味醂を合わせて毎日作っている。安い調味料だと味が決まらないそうだ。 それにしても、魚を食べても食べてもなかなか減らない。魚の下からまた新たな魚が出てくる。魚だけで満腹になりそうだから、ごはんを大盛りにしたりすると、おそろしいことになる。ほぼ同じラインナップの魚が盛られる地魚のお刺身定食には、同じ値段なのに、野菜の天ぷらまで付く。どうなっているのか、もはやわからない。
「地魚刺身定食は最初、3種盛12切れではじめたんだけど、もっと地魚をいろいろ食べて欲しくて、最近は8種類を2切れずつ盛り合わせています。安く仕入れられたら、どんどんのっけちゃうんだよね(笑)」。

丼専門店なので、魚料理だけでなく、天丼、カツ丼、親子丼、ステーキ丼もあるし、さらには鹿カツ丼、猪カツ丼なんてジビエメニューもあるのでびっくり。3日とあけずに通う常連客が多いし、具をのせないで別盛りにして欲しいというワガママにも応えているので、メニューがどんどん増えているそうだ。壁が手書きメニューで埋め尽くされるのも、時間の問題かも。


「ウチはね、魚もそうだけど、野菜もおいしいんだよ」と鍵和田さん。聞けばもう30年も前から無農薬の野菜栽培に土づくりから取り組んでいるそうで、店で使う野菜はすべて南足柄の畑から届く。フロアの片隅には、たくさんの瑞々しい野菜が積まれ、サラダや天ぷらや胡麻和えなどになって、提供されている。だから丼ものや刺身に付くツマも地元の野菜。刺身に付きものの大根のツマも、ここでは見たことがない。そういうブレない姿勢がすばらしい。
「夏の間は魚の水揚げ量も落ちるから、地魚を集めるのは苦労するんだけど、やっぱりこの店に来たお客さんにはおいしい魚を安く食べてもらいたいからね。1000円でお釣りが来る値段で、ずっとやっていきたいと思っています」。
ひと昔前と違って、地魚の値段が上がっている今、この価格で出せるのは鍵和田さんが長年培ってきた経験や、信頼関係によるところが大きい。これからも1000円でお釣り!でお願いします。

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丼万次郎
小田原市西大友136 営業時間11:00~15:00/17:00~22:00 無休 《テイクアウト情報はこちらでご確認ください》 https://www.facebook.com/donmanjiro2017/
小田原地魚漬丼880円、地魚のお刺身定食880円
☆ほぼすべての丼がテイクアウトOK(下の写真は地魚漬け丼) *営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。
