ししまい。店名には、たくさんの人が集まってお祭りのように賑やかな場所になってほしい、という店主・宮代とよ子さんの思いが込められている。かつて食料品スーパーだった建物をリノベして、2012年に開店。その名残なのだろう、今でも屋根には『たかはしストアー』という文字が残っている。何だかマウイ島のハセガワ・ジェネラルストアを彷彿させるが、あくまでも、ここはラーメン屋だ。

看板メニューは、その名も、ししまいらーめん。今どき何と、500円ぽっきり。「家でインスタントラーメンを食べるより、ここで化学調味料を使わずにちゃんとしたラーメンを作るから、ワンコインで食べていきませんか、っていうお店をやりたかったんです(笑)」。

となりの平塚市にソウルフード的なタンメンで有名な『花水ラオシャン本店』という、常に行列人気の店がある。とよ子さんは、そこのひとり娘。産湯も離乳食もタンメン、なんてことはなかったそうだが、何しろ家業なので、10年くらいは厨房を手伝っていたという。「毎日欠かさずに麺を手作りしているところ、その麺にかんすいを使っていないところ、トッピングは刻んだタマネギというところ。その3つは昔からすごくいいなあと思っていたので、私のお店でもそうしています」。
しかし、それ以外は、麺もスープもトッピングも完全オリジナル。試行錯誤を繰り返して、ようやく辿り着いた唯一無二の味だ。『花水ラオシャン本店』のタンメンもそうなのだが、この一族のDNAは、なぜにここまで独創的なヌードルを生み出すことができるのだろうか。

ししまいらーめんの麺は、全粒粉をたっぷりブレンドした粉で作り、一晩寝かせてから使っている。「パン屋で働いていたころに全粒粉の入ったカンパーニュが好きだったので、ラーメン屋をやろうと決めた時には、絶対にカンパーニュみたいなイメージの麺にするんだ、って決めていたんですよ」。うーむ、その発想からすでにふつうじゃない。
「最初はボソボソしてたり、酸味があったり、なかなかうまくいかなかったので、モチモチした食感で粉の風味もしっかり味わえる麺ができた時は、うれしかったですねー」。
その後、全粒粉入りの麺に合わせて、スープを開発。塩でも醤油でも味噌でもない、まったく新しいジ
ャンルのスープが出来上がった。トッピングは潔く、野菜のタレに漬けてから蒸し上げた鶏モモ肉のスライスとキャベツ、糸唐辛子のみ。
「鰹節、煮干し、丸鶏のガラなどをたっぷり使ってとったスープに、野菜とハーブのスープをミックスしています。調味料を使う場合は、スープの味を殺さないように、ホワイトペッパー→花椒→自家製ラー油→酢みたいな感じで、味の薄いものから順に入れていただければ」。


麺もスープもここにしかない味だから、その感想は賛否両論。またすぐ食べたい派とちょっと苦手かも派に、ここまではっきり分かれる店も珍しいかもしれない。これを書いているライターは大好き派。『花水ラオシャン本店』と、両方楽しんでいますとも。おしまい。

#大磯 #ししまい #ラーメン #ラオシャン #タンメン #ソウルフード
らーめんかふぇ ししまい
大磯町西小磯757 営業時間11:00~17:00 日・月曜定休 P3台
ししまいらーめん500円、ぎょうざ300円
*営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。