何人かの友人から「『nico cafe』の唐揚げ、食べました?めちゃおいしいですよ」と聞いた。ふーん、つったって鶏の唐揚げでしょ、と半信半疑でウワサの『サクサク唐揚げご飯』をはじめて食べてみたらびっくりした。名前通りサクサクでジューシー。もっと食べたくて、箱にギッシリ詰めてもらい、お持ち帰りしたほどだ。

2010年にオープンした『ニコカフェ』は、和田義之さんと真帆さん夫妻が営む古民家カフェ。店の切り盛りは、主に真帆さんが担当しているが、なぜか唐揚げだけは、義之さんしか作らない。後述するが義之さんは本業があるにも関わらず、ランチタイムには、その仕事を中断し、必ず店に来て、黙々と厨房で唐揚げを揚げている。それはもう、鶏だけに全神経を集中して。

「カレーや蒸し鶏ご飯などのプレートランチがあったのですが、できたてアツアツのものを出したいね、と唐揚げを出すことにしたんです。こだわり派なので、試行錯誤を重ねてこの味になったみたいですよ」と真帆さん。 注文が入ってから鶏のもも肉を切りはじめたので驚いた。てっきりたれに漬け込んで味つけしたものを揚げるのかと。「仕込みとかなしでシンプルに作りたかったので、鶏の大きさ、味つけ、粉の種類に揚げ油の種類や温度、時間など、あらゆることを試しました。その結果、最もジューシィに揚がるのは、ひとつ50グラム。けっこう大きいです。そのほうがインパクトもあっておいしそうでしょう」。

少々ネタばらしになるけど、鶏肉の味つけは濃口醤油だけ。漬け込まず手で醤油をもみこむ。その回数108回。除夜の鐘で1年の煩悩を払う数と同じだ。いろんな回数を試したところ、108回が最も味がなじんでおいしかったとか。 この元祖・醤油味唐揚げの人気をおびやかしているのが、『サクサク梅酢唐揚げご飯』。醤油味の唐揚げより、ちょっぴり色白に仕上がるのは、小田原産の梅で作る梅酢味のせい。揚げたてのところに、鰹節粉をまぶすのもミソ。相性のいい梅と鰹の香りが食欲をそそる、さっぱりとした味わいの唐揚げだ。プレートには玄米100%ご飯とサラダが添えられている。

「今まであまり地元の食材を意識していなかったんですが、小田原で店をやっているし、梅を使ってみようかな、と思って。自家製の梅酒や梅サイダーも人気ですが、この梅酢唐揚げも、かなり評判いいですよ」と笑う義之さんのもう一つの仕事は、店舗を中心にデザインや設計、施工まで請け負う建築士さん。

とくに古い建物のリノベーションや古民家移築が得意で、茅ヶ崎の『熊澤酒造』のレストランやギャラリーをはじめ、多くの店舗を手掛けてきた。『ニコカフェ』の建物も、築90年の元建具屋さん。当時、住居兼商家として作られた独特の建築で、白蟻に食われて崩壊寸前だった柱を総入れ替えし、当時の趣を色濃く残した店になった。

「唐揚げを食べに来てくださっても、ぼくがいないと申し訳ないので、毎日早朝から図面を書き、午前中は現場で監督し、昼前には店に戻って料理をしています。こんな仕事の仕方をはじめたら予想以上にバランス良く、すごく気に入っています」。


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nico cafe 小田原市栄町2-15-26 営業時間10:30~17:00 ほぼ毎日営業、不定休。臨時休業などはSNSをご覧ください。 《テイクアウト情報はこちらでご確認ください》 http://e-nico.info
元祖サクサク梅酢唐揚げご飯1,000円、よへじマサラ1,000円、黒光りチーズケーキ500円、妻ビール650円、自家製梅サイダー550円
*営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。