山本餃子の焼餃子定食をはじめて食べたとき、完壁なフォーメーションだなと感じた。注文するとすぐ搾菜と台湾煮玉子、野菜の冷菜が盛られた小皿が登場する。「これをお出しすると、ビール頼んじゃおうかな、というお客さんも多いんです」と山本さん。 目の前で焼けていく餃子を眺めながら待つことしばし。香ばしい皮を酢醤油につけてガブリ。続いて 飯をひと山かっこむ。焼餃子と白いご飯とはなんとベストマッチなのだろう。食べ終わるとなんとなくパワーが湧いてきて、午後もがんばろうという気持ちになってくる。
「女性ひとりで入れる餃子屋をやりたかった」と言う山本さんは、鎌倉に引っ越したことを機に、仕事も鎌倉で、と考えていたそうだ。

「餃子が嫌いという人は聞いたことないし、餃子だけならひとりで店ができる気がしたんです。当時の勢いを思い出すとゾッとします(笑)」。
店をはじめる前の会社員時代、通っていた餃子屋が田町にあった。女主人が営む名前のない餃子屋だ。
「すごくおいしいし、女ひとりで切り盛りする姿にも憧れました。でも餃子にニラが入ってたので、ランチ時には食べられなかったんですよ。それがヒントになり、ニラやニンニクを使わない、女性向きの餃子を出してみようと決めました」。

焼餃子は鎌倉の邦栄堂製麺所の皮を使い、挽肉と叩いた豚モモ肉をミックス。そこにキャベツ、白菜、タマネギ、長ネギと野菜をたっぷり。コクを出すために味噌も2種類加える。ヘルシーな焼餃子と違い、水餃子は肉感的。手作りの皮にバラ肉とモモ肉のスライスと生の海老を叩いて包み、野菜は控えめ。ネギ油と黒酢をかけて食べる小籠包風の餃子だ。
「5年間店をやってきて実感したのは、想像していた以上に女性が餃子好きなことです。昼も夜も女ばかり、ということもよくあります。中華屋さんの扉をガラッと開けて入るより、ゆっくり餃子を食べられる空間を求める方がすごく多いことが分かり、最初に決めたテーマは間違ってなかったって、うれしかったですね」。

そして鎌倉の街を夕闇が包むころ、店は餃子がメインの居酒屋に変わる。
「店をはじめる前からふらりと飲みに行っていた立ち飲み屋『ヒグラシ文庫』が好きで、こういう店もいいなと思っていました。手ごろな値段と量で、ひとりで行っても楽しめる店なんです。でも、OLをしてたから分かるんですけどハイヒールを履いてると立ち飲みはキツイんですよ(笑)。落ち着いて飲んでもらえるよう椅子席にしました」。
夜のメニューは焼餃子、水餃子に加え、変わり種の具が入るらしい蒸し餃子が登場することも。週末にはニラ入りの焼餃子も出している。一品料理も飲み物も150円から数百円なので「黒板のメニュー全部下さい」というグループもいるとか。一番人気の酒はヒグラシ文庫のオーナー直伝のレモンサワー400円。


「うちは9時閉店なので、一軒目に立ち寄ってくれる方が多いです。そういう使われ方がいいんですよ。店じまいしたら私も飲みに行けますし(笑)。これからも楽しく、細々と店を続けていきたいです。80歳ぐらいまでは餃子を包み続けられるかな」。

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山本餃子
鎌倉市御成町9-6 営業時間11:30~17:30(2020/4/1よりしばらくは夜営業をお休みします) 月・火曜定休 《テイクアウト情報はこちらでご確認ください》https://www.facebook.com/山本餃子-533931506683336/
焼餃子定食850円、シウマイ定食1,000円(大きめ焼売4個におかず、ライススープ付き)、
焼餃子単品6個450円、冷凍6個350円、蒸しシウマイ4個500円、正統レモンサワー450円 *営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。