二宮駅のすぐ近くにある昭和レトロな喫茶店『山小屋』。チリンチリンというクマ避けの鈴みたいな音を立てながらドアを開けると、店内には木のテーブルや丸太のイスが並んでいて、なるほど山小屋ムードむんむんだ。

壁にはいくつかの古時計と、世界各地の砂が入ったボトルのコレクション、そしてなぜかBOØWYのサインが飾られている。料理をつくるのはマスターの尾上英雄さん、飲み物やスイーツは妻の和枝さんの担当。ちなみにふたりとも登山が好きなわけではないそうだ(笑)。


『山小屋』の名物は、アイスクリームやフルーツ、ソース、トッピングを自分の好きなように組み合わせてつくることができる、世界にひとつだけのオリジナルパフェ。メニューには680円とだけ書かれている。どんなフルーツを選んで、どんなソースと組み合わせても、値段はまったく変わらないらしい……ホントデスカ?
メニューに載っていたオリジナルバフェの具材を数えてみたら、アイスクリーム7種類、フルーツ8種類、ソース11種類、トッピング3種類だった。数学が得意な友人に、そのデータを送ってパフェのバリエーションを計算してもらったら、その数、474,193,919通りとか。ってことは毎日違うオリジナルパフェを一杯ずつ食べたとしても、軽く13万年近くかかってしまうので、すべてを制覇するのは、なかなか難しそうだ。

そんなオーダーメイドのパフェができあがってテーブルへ運ばれる度に、「わ~!」とか「きゃ~!」みたいな歓声が聞こえてくる。かく言うぼくも、注文した《フルーツ全部のせ》パフェが目の前に置かれたときには、思わず叫んでしまった。「きゃ~!」ではなく、おっさんなので「むお~!」と。
メロン、バナナ、マロン、りんご、オレンジ、キウイ、パイナップル、マンゴーなどのフルーツが盛られたパフェの迫力たるや、まさに「むお~!」だったのである。驚くべきことに、缶詰フルーツがひとつも入っていない。まさに季節の生フルーツオールスターズ。しかも、リンゴがよくあるウサギちゃんではなく孔雀の羽根のようにカットされているなど、さりげなく凝り凝り。

そしてもうひとつ、 『山小屋』のちょっといい話。このお店では、ランチタイムになると、《つくってからラップした日替わりランチ》の実物サンプルを店頭に出す。もう20年近く続けているそうだ。「自分たちもそうなんだけど、知らないお店へ行ったときに、どんなランチを出しているのかわからないと、入りにくいですからね」と英雄さん。

つまり、このサンプルは常連のためではなく、「その日来るかどうかわからないはじめてのお客さん」のためのもの。小さな喫茶店がそれほど長きに渡って、はじめてのお客さんがいつ来ても安心して入れるように毎日準備しているとは……サービスとかホスピタリティーといった言葉を越えたところで、 『山小屋』夫婦が自然体でそうしていることに、グッときてしまった。これからはここに来て「むお~!」と叫ぶことが増えそうだ。


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山小屋
二宮町二宮222 営業時間11:30~21:00(L.O.) 水曜・第2火曜定休
オリジナルパフェ750円、へんてこドリア1,120円(スープ、ドリンク付き)、日替わりランチ1,100円〜(ライス、ドリンク付き)すべて税込 ※パフェはランチタイムが終わってからの14時以降にしか注文できません。 *営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。