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その相棒の名は《ン》からはじまる【イル・チエロ/小田原】

 記憶力にはかなり自信がない方だが、2011年ごろ、当時大磯にあった 『イル チエロ』で《生しらすとンドゥーヤのブルスケッタ》をはじめて食べた時の記憶は、不思議なくらい薄れていない。カリカリの薄切りバゲットに塗られたンドゥーヤという真っ赤なペースト。そこに混ぜ込まれたプリプリで甘い生しらす。ンドゥーヤーは見た目ほどじゃないにしても、舌が痺れない程度に辛く、そこから肉の香りが漂ってきて、ああなるほどこれはゆるゆるなスパイシーサラミなのか、とわかった時は、世界にはまだまだ知らない食べ物があるなあ、ってしみじみ思った。

 そもそも、《ン》からはじまるフードなんて、ほかに聞いたことがない。しりとりの最終兵器になりそうだよね、と誰かが言ってたけど、よく考えれば、その前にしりとりの勝負はついているんだから、まったく役に立たないじゃんか、ンドゥーヤ。


 さて、このンドゥーヤ、唐辛子の名産地であるイタリアのカラブリア州スピリンガ村でつくられている。豚の挽肉、岩塩、乾燥唐辛子を豚の盲腸に詰めてからスモークし、さらに2、3ヶ月かけて乾燥&熟成させるそうだ。

 よくイタリアという国はブーツの形をしていると言われるが、スピリンガ村が足の甲あたりに位置するなら、かかとくらいのところにあるプーリア州レッチェなどで、2年に渡って料理修行をしていたのが、『イル チエロ』オーナーシェフの佐々木健一さん。


「現地ではンドゥーヤをサラミというよりは調味料みたいな感覚で、パンに塗ったり、ビッツァとかパスタの具やソースなどに加えたり、気軽に使っていました。生しらすを食べる国って限られていると思うんだけど、イタリア人も日本人並に生しらすが好きなんですよ。日本のものよりやや大ぶりなんですが、ビアンケッティと呼ばれる生しらすがあって、よくンドゥーヤで和えたものが食べられていたので、相模湾のしらすを口にした時、すぐにそれを思い出したんです」。


ンドゥーヤをボウルに入れて、オリーブオイル、塩、胡椒を加えながら、よく混ぜてペーストをつくる。

「小田原産のしらすはほとんどないので、うちで使っているのは、茅ヶ崎産や平塚産です。その日使う分を仕入れたら、フレッシュなうちに、ンドゥーヤのペーストと混ぜておきます。味が入るように、軽く漬けておくようなイメージですね」。

『イル チエロ』は、シェフ自らがしっかり飲んで(!)選んだイタリアワインの品揃えも魅力のひとつ。せっかくなので、ンドゥーヤにぴったりなワインを聞いてみた。

「やはりンドゥーャと同じカラブリア州の白、なかでも土着品種であるグレーコビアンコが良いですね。同じ州のガリオッポ種を使ったロザート(ロゼ)もおすすめです」。

もうひとつの生しらす料理である『ビシソワーズ生しらす添え』は、ガラスの器の下段にさっぱりしたコンソメゼリー、中段に濃厚なビシソワーズ、そして上段にキリッとエッジの立った生しらす、という美しい構成。目でも舌でもダブルで、トリプルミックスなテイストで、新鮮しらすを満喫できる一品なり。



#小田原 #イル・チエロ #生しらす #イタリアン #ンドゥーヤ

 

イル・チエロ 小田原市城山1-6-32 営業時間11:30~15:00(L.O.14:00)/17:30~22:00(L.O.21:00) 不定休 www.osteria-ilcielo.com 


生しらすとンドゥーヤのブルスケッタ、ビシソワーズ生しらす添え各1,200円、ランチ1,500円〜、ディナー3,800円〜 *営業時間や料金、定休日などは変わっていることもあります。

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